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2022年06月

2022.06.24

相続税と贈与税の一体化はどうなる?

 相続税と贈与税の一体化はどうなる?今後の動向を予測解説

 

2020年(令和2年)12月発表の「令和3年度税制改正大綱」で、近い将来に相続税と贈与税が一体化する可能性があることが分かりました。

このことから、早ければ2021年(令和3年)の「令和4年度税制改正大綱」で具体的な改正案が発表されるのではと思われていました。

しかし、「令和4年度税制改正大綱」では具体的な改正案はなく、前年とほぼ同じ内容が記載されたのです。

ただ、これはこの内容を引き続き検討するということになり、近い将来相続税と贈与税が一体化されるという可能性が高いことを意味します。

相続税と贈与税の一体化とは、簡単に言うと「相続と贈与のどちらで財産を渡しても、課税額が同じになる」ということです。

今回は、現行の相続税と贈与税の仕組みから、今後一体化に向けてどのように変わる可能性があるのかを解説していきます。

 

現行の相続税と贈与税について

相続税とは、相続財産がある一定額を超えた場合に課せられる税金です。その遺産額が多いほど、税率は高くなります。

そこで、生きているうちに財産を渡す「生前贈与」をすると、相続財産が減って相続税も少なくなります。

 

贈与税には「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」があります。

暦年課税制度…毎年1月1日から12月31日までの贈与額の合計が、110万円まで非課税となる制度

財産合計額から、基礎控除の110万円を差し引いた額に、贈与税の税率をかけて計算する

 

相続時精算課税制度…原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる制度

累計の贈与額が2500万円までの財産を何度でも非課税で贈与できる代わりに、遺産相続時はその非課税で贈与された財産を含めて相続税を計算する

 

現行はこのような制度なので、贈与税がかからない範囲で分割して贈与し、相続税を抑えることができるのです。

しかし、相続税と贈与税は資産が一部の富裕層に偏らないよう、再分配する役割を担っています。

そこで、相続税と贈与税が本来の役割として適切に機能するため、税制の一体化が検討されているのです。

 

相続税と贈与税の一体化に向けてどう変わるのか

では一体、相続税と贈与税はどのように変わるのでしょうか。

今後の動向を予測すると、次のようになる可能性があります。

・相続税の3年内加算ルールの延長

・暦年課税制度を撤廃し、相続時精算課税制度へ一本化

・孫やひ孫への贈与も相続税の課税対象となる

 

相続税は、相続開始前の3年間に贈与された財産も相続財産に加えて計算されます。

日本は3年ですが、諸外国においては日本よりも加算対象となる期間が長く設定されています。

例えばイギリスなら7年、ドイツなら10年、フランスなら15年もの期間が対象です。

さらにアメリカは、一生涯にわたって贈与された財産と、相続財産の合計額が一定金額を超える時に課税するということになっています。

つまり相続税と贈与税が完全に一体化しているのです。

この諸外国の例を参考にしつつ、相続税と贈与税のあり方を見直すという考えであることから、日本でも贈与の対象期間が延長される、もしくは一生涯さかのぼる方式になる可能性があるといえます。

一生涯さかのぼるということは、現行の相続時精算課税制度と同じですよね。つまり、暦年課税制度を廃止し、相続時精算課税制度にゆくゆくは一本化されるかもしれません。

また、現行では相続税の3年内加算ルールの対象は、基本的に相続などによって財産を受け取った相続人になります。

孫やひ孫などの遺産相続をしなかった人は、この3年内加算ルールは適用されません。

現行のままでは、孫やひ孫へ贈与をすることで節税できてしまうので、今後は孫やひ孫への贈与も3年内加算ルールの適用対象となり、相続税の課税対象になる可能性があります。

 

令和4年度税制改正大綱では、相続税と贈与税の一体化について引き続き本格的に検討されることが明記されました。

早ければ、2022年12月の令和5年度の税制改正大綱で、改正内容が発表されるかもしれません。

しかし、国民の反感を招くことも考えられるので、いきなり相続税と贈与税が一体化することはないでしょう。

「暦年課税制度の相続税開始前3年以内加算ルールを延長する」もしくは「暦年課税制度を撤廃して相続時精算課税制度に統一する」というどちらかになりそうです。

相続税対策での生前贈与ができなくなる前に、生前贈与をご検討中の方は早めに税理士へ相談することをおすすめします。

 

姫路市の税理士法人ティーエーシーでは、相続税や贈与税以外にも、税金に関するお悩みやご相談をお受けしております。

お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

お問い合わせ先

税理士法人ティーエーシー

〒670-0056 兵庫県姫路市東今宿3丁目2番36号

TEL:079-262-9015 / FAX:079-262-9017 

2022.06.03

相続税と贈与税の違いは何?

 相続税と贈与税の違いは何?それぞれの基本をやさしく解説

相続税と贈与税は、どちらも金銭や財産を引き継ぐ時にかかる税金という意味では似ています。

しかし、相続税と贈与税では税率の違いだけではなく、それぞれで特例や控除があるため、単純に比較することは難しくなります。

財産を譲る人が亡くなってから相続するのか、生前贈与を行う方がいいのか、詳しい違いが分からないと迷ってしまいますよね。

そこで、今回はそれぞれの概要について解説していきます。

相続税と贈与税の違いについて、基本的なところから理解を深めてみましょう。

相続税とは

亡くなられた方(被相続人)の預貯金や不動産などの財産を、その財産を引き継ぐ方(相続人)が受け取ることを相続と言います。

そして、その引き継いだ財産の総額が、「基礎控除」という一定の金額を超えた場合に課せられる税金が相続税になります。

つまり、相続をしたからといって、必ず相続税を納めなければいけないということではありません。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

例)夫が亡くなり、相続人が妻と子ども2人の計3人の場合

 3,000万円+3×600万円)=4,800万円

このように、基礎控除額は4,800万円ということが分かります。

亡くなった夫の相続財産が、基礎控除額の4,800万円を下回っていれば、相続税の申告や納税は不要になります。

この基礎控除額を超えた相続財産に対しては、相続税がかかります。

例えば相続人が3人の場合、相続財産が8,000万円であれば、基礎控除額の4,800万円を引いた3,200万円に対して相続税がかかるのです。


相続税の税率

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1000万円以下

10%

3000万円以下

15%

50万円

5000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1700万円

3億円以下

45%

2700万円

6億円以下

50%

4200万円

6億円超

55%

7200万円


「法定相続分に応ずる取得金額」とは、正味の遺産総額(プラスの財産からマイナスの財産を引いたもの)から基礎控除額を引いた残額になります。

ただし、相続財産の評価については、土地や非上場株式の評価など、専門的な知識や経験が必要となる場合があり、相続税額の計算も単純に税率をかければいいだけではなく、複雑な計算が必要となってきます。そのため、個人で計算しようと思っても、正確な相続税額を出すのは難しい場合があるので、その際は税理士や税務署に相談してみてください。


相続税は誰がどのように払う?

 相続税は、遺産を相続した人全員が、相続分に応じた税額をそれぞれで支払うことになります。

 また、その支払いは遺産からではなく、相続人それぞれの財産から支払います。

 しかし、相続税の納付期限までに相続手続きが済んでいれば、相続した財産から支払うことも可能です。


相続税の申告期限、納付期限

 相続税は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」に申告、納付しなければなりません。

 なお、申告する窓口は、被相続人の住所地を管轄する税務署となります。被相続人と離れて暮らしていた場合は、自宅近くの税務署では手続きができないので、期限までに余裕を持って進めてくださいね。

 

贈与税とは

 贈与税とは、個人が個人から無償又は著しく低い価額で財産を譲り受けたときにかかる税金です。

個人が会社などの法人から無償で財産をもらった場合は、贈与税ではなく所得税がかかります。

逆に、法人が個人から無償で財産を貰った場合は、法人税がかかります。

贈与税の課税方式には、「暦年課税制度」と、「相続時精算課税制度」があります。

どちらも贈与税の計算期間は、毎年11日から1231日までの贈与が対象となります。

 

 暦年課税制度の場合、年間110万円の贈与まで非課税となります。

 財産合計額から、基礎控除の110万円を差し引いた額に、贈与税の税率をかけて計算します。

 受け取った合計額が基礎控除である110万円以下の場合は、贈与税はかかりません。110万円を超えた場合は、申告が必要となります。

 

 

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、20以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

相続時精算課税制度を選択した場合、その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。つまり、累計の贈与額が2500万円まで贈与税は非課税となります。

ただし、相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。

その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。

なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。


贈与税の税率

贈与税の税率には「特例税率」と「一般税率」があります。

特例税率祖父母や父母などの直系尊属から、18歳以上の子、孫などへ贈与する場合の税率

基礎控除後の課税価格

特例税率

控除額

200万円以下

10%

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1000万円以下

30%

90万円

1500万円以下

40%

190万円

3000万円以下

45%

265万円

4500万円以下

50%

415万円

4500万円超

55%

640万円


一般税率夫婦間、兄弟間、親子間(子が18歳未満)の贈与で、特例税率に該当しない場合の税率

基礎控除後の課税価格

一般税率

控除額

200万円以下

10%

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1000万円以下

40%

125万円

1500万円以下

45%

175万円

3000万円以下

50%

250万円

3000万円超

55%

400万円

 

 暦年課税制度の贈与税は、次のような計算式になります。

贈与税額=(一年間に貰った財産の総額-110万円)×贈与税率-控除額

 このように、贈与税率は貰う人の立場や年齢によって変わってきます。

 

贈与税は誰がどのように払う?

贈与税は「財産を貰った人」が支払うことになります。「あげた人」ではありません。

そして、贈与税は貰った個人に課税されます。

 

贈与税の申告期限、納付期限

贈与税が生じる場合は、贈与があった年の翌年315日までに申告と納税をする必要があります。

 

相続税と贈与税は結局どちらが得なのか?

ここまで相続税と贈与税の違いを説明してきましたが、詳しい特例や控除を考えるともっと複雑になってきます。

相続税は、過度な税負担によって相続人のその後の生活を圧迫しないよう、税率についても低く抑えられ、特有の控除などもあります。

しかし、生前贈与を長期間少しずつ行うなどの方法を取れば、最終的には相続税よりも低い税率になる場合もあります。

それぞれの財産状況や家族構成によっても違ってくるので、相続税と贈与税のどちらか一方を選ぶのではなく、総合的に判断をするのがいいでしょう。

財産の把握や正しい課税額は一個人での判断が難しくなるので、専門家である税理士へご相談されるのをおすすめします。

姫路市の税理士法人ティーエーシーでは、相続や贈与のご相談をお受けしておりますので、お悩みの際はぜひご用命ください。

お問合わせ先

税理士法人ティーエーシー

〒670-0056 兵庫県姫路市東今宿3丁目2番36号

TEL:079-262-9015 / FAX:079-262-9017

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